「ひとりでいることが一番の軽量化」キャンプブームの火付け役・ヒロシが語る人生譚


ヒロシ(1972年1月23日 - )は、日本のお笑いタレント、漫談師、俳優、ベーシスト、YouTuber、社長。本名、齊藤 健一(さいとう けんいち)。 ヒロシ・コーポレーション所属。 熊本県荒尾市出身。 九州産業大学商学部商学科卒業。 身長172cm 血液型O型。
63キロバイト (9,292 語) - 2021年12月28日 (火) 08:19


 自らの悲哀に満ちた体験をネタにし、2000年代中盤に一世を風靡したお笑い芸人のヒロシ氏。ペピーノ・ガリアルディの「ガラスの部屋」が流れるなか、斜め下を向きながらピンスポットを浴びるその姿は、今も鮮明に記憶している人が多いだろう。  そのヒロシ氏が、現在はキャンプ系YouTube「ヒロシちゃんねる」をメインに活動している。特にカメラに向かって話すわけでもなく、淡々とキャンプをこなす動画が、視聴者の心を鷲掴みにした。コロナ禍におけるキャンプ需要が高まったこともあり、その勢いは加速し、2020年11月にはチャンネル登録者数が100万人を突破。 また同年の「ユーキャン新語・流行語大賞」では、「ソロキャンプ」がトップ10に選出され、授賞式にソロキャンプ代表として出席した。ヒロシ氏は今やキャンプ界の顔ともいえる存在である。 キャンプブームが訪れている現在、そのブームの火付け役ともいえる存在のヒロシ氏に、キャンプ系YouTubeチャンネルを始めたきっかけや、現在のキャンプブームについての話を伺った。独立して個人事務所を設立。YouTubeに辿り着くまでの長い道のり 2015年には個人事務所「ヒロシコーポレーション」を設立し、様々なジャンルでの活動を志したヒロシ氏。お笑い芸人だけでなく事務所の社長として精力的に活動の幅を広げていったが、YouTubeに辿り着くまでのその道のりは険しかったそうだ。「独立してからは、お金を稼いで見返したい気持ちで様々なことに挑戦しました。最初はライブハウス経営をやろうとしていたんです。昔から自分自身がバンド活動やっていて、スタジオを借りる値段が高いなと感じていました。でも自分でライブハウス経営をすれば、練習もライブもできます。 なんなら『ヒロシです』のネタやトークライブもできて、使わないときは人に貸すことだってできますよね。それで1年間は物件を探していたんですけど、条件に合うのがないんです。 何回かイイ物件を見つけて、図面を描いて打ち合わせしたりと、時間は使うんですけどね。それで詰めのところまできたところでいきなり『二階も借りないとダメです』と言われて、渋々了承したら今度は『一棟借りろ』と言われたり……。だから時間ばかりが過ぎて、全然前に進めませんでした。 結局1年後になんとか探しあてた物件を借りて、事務所兼用でカラオケ喫茶を始めたのですが、それも全然儲からなくてやめてしまいました。ライブハウス経営の構想を練っていたときは、音楽・お笑い・地下アイドルと、ビジネスとして完全に狙っていたのですが、現実的にはカラオケ喫茶に落ち着いて、それも長くは続かず……。事務所を立ち上げた当初は、狙ってやったことがことごとく失敗しましたね」 ビジネスとして成功すると思ったものに狙いを定め、果敢にトライしてきたヒロシ氏だが、今やYouTubeのキャンプ動画が大ヒットしているのはご周知の通り。だが、動画投稿を始めた当初、ビジネスとしての狙いは全くなかったようだ。「最初は自分で見る用として写真や動画を撮っていたのですが、それを飲みの場で友達にみせようと思い、編集してYouTubeに投稿するようになりました。だから一般の人に見られると思っていなかったんですよ」地方でかけられた一言 それまでは「見られない」と思っていたYoutubeの動画だったが、地方で行われたサイン会で言われた一言が大きな転機となる。「地方で開催されたサイン会で『ヒロシちゃんねる観てます!』と言われたときには、かなり驚きました。それが徐々に増えていった感じですね。それでちゃんとやろうと思い、一眼レフカメラを買いました。そこから再生回数が増え続けて、キャンプブームになって……。あれだけビジネスを狙って動いてきたのに、全く狙っていなかったキャンプ動画が当たるとは思いませんでした」  遊びで始めたキャンプ、そして友達に見せるために動画を作ったことで、結果的にキャンプブームの火付け役となってしまったヒロシ氏。現在は新規でキャンプを始める人が急増しているが、このキャンプブームが起きたことで、ヒロシ氏はどういった変化があったのだろうか。 「キャンプブームによって、行けるキャンプ場は減りました。ひっそりとやりたいタイプなので……。キャンプ場で『ヒロシさんですよね? ちょっと写真お願いします』とか言われると、正直落ち着かないんですよ。動画を撮っていても、どうしても『ココは撮らないと!』って場面があって、例えば肉の『ジュッ』って音を撮っている瞬間に『すみませーん』という声が入ると、勘弁してくれよってなります。 だから海外でのキャンプも考えましたが、今はコロナで行きにくいですしね。キャンプグッズもYouTubeで紹介したのが高騰して、前は3000円で買えたランタンが、ヤフオクで15000円で売られていたりとか……。好きなことが仕事になっているのはありがたいですが、正直なところ、けっこう不自由しているというのが本音です」声をかけられたくないから山を購入 新規のキャンパーが増え、ソロキャンプを行っているヒロシ氏に対するマナー違反ともいえるお声がけが増えてしまったようだが、ヒロシ氏は自身で保有している山林がある。キャンプ場に行くのとは、また全く別の世界なのだろうか。 「声をかけられたくないという理由で、山を購入しました。そうしたら完全に”ソロ”を楽しめるので、撮影するにしても快適です。だからといってずっと同じところだと飽きるので、他のキャンプ場も行くんですけど、数年前は1人もいなかった冬場のキャンプ場ですら、今は予約でいっぱいですからね。 でもブームになっていなかったらYouTubeもここまで観られていないだろうし、仕事も増えていなかったと思うので、僕としてはイイことの方が多いです」  完全にソロで楽しめる場所を購入し、ゆっくりと物思いに耽る時間も好きだと語るヒロシ氏。一般的にキャンプシーズンといえば、春~夏といった暖かい季節を思い浮かべるだろうが、冬のキャンプこそ魅力が詰まっていると語る。 「本来なぜ夏に行くものだと思われていたかっていうと、夏休みがあったからなんですよね。子供を連れた家族で行くとなったら、夏しか行けませんから。でも夏に行くと虫多いし暑いし……。よくよく考えたら何もいいことないんですよ。 冬のキャンプで焚き火して料理作って……、といった動画を上げてたら、冬キャンプの良さが世間にバレてしまいました。それで冬も全然予約が取れなくなりましたけど、でもキャンプもブームなんで、そのうち終わると思っています」キャンプしている時の気持ちを言葉に キャンプYouTuberとして、業界を牽引する存在となったヒロシ氏はキャンプ中に様々な言葉が去来するという。2021年9月に発売された日めくりカレンダー『人生、ソロキャンプ』から、今も心に残る言葉を聞いてみた。 「日めくりカレンダーの言葉は焚き火を見ながらだったり、キャンプに行く道中で思ったことを書きました。個人的には、軽量化が叫ばれているなか、『ひとりでいることが一番の軽量化だ 』という言葉が気に入っています。『普段は脇役でもソロキャンプでは俺が主役』というのも、ソロキャンプ中に思いついた言葉です」  この日めくりカレンダーには、言葉を生み出した環境だけでなく、ヒロシ氏の体験や経験から生みだされた深い言葉が詰まっている。こういった奥深い世界観が、お笑いのネタとなり、人々を魅了してきたのだろう。  お笑いのネタだけでなく、キャンプ動画においても、映像や音のひとつひとつが観ている人を引き込んでいく魅力がある。果たして、お笑いのネタ作りとキャンプ動画制作に、共通しているところはあるのだろうか。 「どっちも自分の好きなように作っているだけなんですけど、やっぱりお笑いのネタは“人に寄せて”しまっている部分もありますね。ネタはベタなものがウケるので。逆に『ウケないけど入れておこう』みたいなものもあります。キャンプ動画は完全に、自分が『こう作りたい』と思う方向に作っています」今、一番やりたいことは……!? 大衆に合わせつつ作ったネタで大ブレイクを果たし、時を経て、完全に自分の心が動くままに作ったキャンプ動画でもまた、新たなブームを巻き起こした。人々を引き込む才能があるヒロシ氏に、今後のお笑い活動についての話を伺った。 「たまーにネタ番組に出ることもありますが、基本的にはネタはやってないです。『YouTubeでネタの配信を』という声もありますが、それもやらないと思います。ネタを書くこともコロナ以降はやっていません。  今のところYouTubeに力を入れてやっていくつもりですが、他にも音声配信アプリの『Radio talk』や『Voicy』などもやっています。今後も目新しいものを見つけて、自分に合うなと思ったらやっていくつもりです。今一番やりたいのはペアーズですね(笑)」  当初は「とにかく見返したいと思い、いろいろ挑戦していた」と語るヒロシ氏。失敗も多く経験したなか、趣味として始めたYouTubeで大きな成功を収めた。単なる趣味でも、発信しなければ何事にもならない。彼は発信することをやめなかったからこそ、今があるのだろう。見返したいという気持ちで行動し続け、お笑いとは別の形で人々を魅了し続けるヒロシ氏の今後の活躍から目が離せない。