岡山の昇竜・菅井竜也八段(30)得意の中飛車から巧みな歩使いで


岡山の昇竜・菅井竜也八段(30)得意の中飛車から巧みな歩使いで藤井聡太竜王(20)に勝利 A級2回戦

…棋対局場において第81期A級順位戦2回戦▲菅井竜也八段(0勝1敗)-△藤井聡太竜王(1勝0敗)戦がおこなわれました。 朝10時に始まった対局は深夜0時…
(出典:松本博文)


藤井 聡太(ふじい そうた、2002年〈平成14年〉7月19日 - )は、将棋棋士。杉本昌隆八段門下。棋士番号は307。愛知県瀬戸市出身。 2016年に史上最年少(14歳2か月)で四段昇段(プロ入り)を果たすと、そのまま無敗で公式戦最多連勝記録(29連勝)を樹立した。その後、最年少一般棋戦優勝・タ
208キロバイト (25,777 語) - 2022年8月5日 (金) 12:30


 8月10日。愛知県・名古屋将棋対局場において第81期A級順位戦2回戦▲菅井竜也八段(0勝1敗)-△藤井聡太竜王(1勝0敗)戦がおこなわれました。 朝10時に始まった対局は深夜0時9分に終局。結果は109手で菅井八段の勝ちとなりました。 リーグ成績は菅井八段、藤井竜王ともに1勝1敗。これでA級は2回戦まですべての対局が終わりました。 藤井竜王の順位戦通算成績は50勝4敗(勝率0.926)となりました。密度の濃い名局 本局がおこなわれたのは藤井竜王のホームともいえる名古屋将棋対局場です。菅井八段にとっては、初めての対局となりました。菅井「やっぱりちょっと雰囲気が違うので、初めは不安があったんですけど。集中してできたかなと思います」 順位戦はあらかじめ先後が決まっています。先手の菅井八段は5筋の歩を中央にまで進めたあと、得意の中飛車に振りました。 藤井竜王は攻めの銀を繰り出して急戦を見せつつ、駆け引きの中で端1筋を突き越します。藤井「こちらが端を突き越すような形になったんですけど。ちょっとそうですね、それを主張にできる展開を目指したかったんですけど、ちょっと本譜はそのあと失敗してしまったのかな、と思います」菅井「一応、想定してた形にはなったので。まあでも、そんなにうまくもいってなかったかな、と思ってました」 26手目、藤井竜王が攻めの銀を四段目に上がった局面で12時、昼食休憩に入りました。 菅井八段は弁当2つを頼んでいたのが話題となりました。菅井「いっぱい食べようかなと思ったです」(笑) 本局は深夜にまで至る大熱戦になりました。結果的に、ここでたくさん食べたのは好手だったのかもしれません。 午後に入り、駒がぶつかって戦いに。菅井八段は左側の桂をさばき、菅井八段が銀、藤井竜王が桂歩歩を持ち駒として駒台に乗せる進行となりました。菅井「ちょっと形勢判断が難しい将棋だったです」藤井「進めてみると思ってた以上にちょっと、こちらの駒の効率がわるくて。ちょっと失敗して、苦しくしてしまったのかな、と思いました」「△1五歩突き越したあたり、どういう構想かっていうのがいろいろあったとは思うんですけど。ちょっと本譜はそこの選択を間違えてしまったと思うので。ちょっとなんていうか、判断力が足りなかったのかな、と思います」 両者ともに自信が持てない進行。評価値上は少しだけ菅井八段がリードして夜戦に入りました。菅井八段は盤面の左右で歩を使って攻めていきます。いかにも本筋と思わせる指し回し。実力者は歩の使い方がうまいものですが、本局では特に、菅井八段の歩の使い方が印象に残りました。このあたりははっきり、菅井八段よしという評判でした。藤井「ちょっとその前にかなり誤算があって、相当厳しいと思っていました」菅井「たしかに、なんかうまくいけそうな気がしたんですけど。ちょっとそのあと、なんか、急におかしくなりましたね」 藤井竜王もまた当然、歩の使い方がうまい。菅井陣に歩を3枚並べたあたりでは、形勢は急接近していました。73手目。菅井八段はじっと自陣に歩を打って辛抱します。菅井「あそこは少しわるいかなと思ったんで。もうなんか仕方ないかな、と思ったです」 形勢はほぼ互角ながら、流れは藤井竜王かと思われたところで77手目。菅井八段はじっと端9筋を突きます。封じ込められた角にはたらきを与える名手でした。 持ち時間6時間のうち、残りは菅井45分、藤井9分。形勢は互角でも、藤井竜王にとっては残り時間の少ないのがつらいところでした。 はたらきのなかった菅井八段の角は、相手の飛車と交換になります。形勢は再び、菅井リード。とはいえ、そう簡単ではありません。菅井「いやあでもちょっと、形勢はずっとわからなかったですね」 深夜の順位戦ではこうした状況で、数々のドラマが起こってきました。 最終盤は菅井八段が一手勝ちの雰囲気。しかし藤井玉の詰みはそう簡単ではありません。残り26分となっていた菅井八段。9分を使って、その簡単ではない詰み筋を読み切ります。菅井「(勝ちと思ったのは)終盤の▲5二飛車と打ったとこですかね」 飛車打ちの王手に対して藤井竜王は玉を一つ上がります。菅井八段は飛車を切って角と刺し違え、以下は長手数ながら即詰み。77手目、角をはたらかせるためにじっと突いた端9筋の歩が詰みにまで役立つという、作ったような美しい収束でした。 玉を追われながら、藤井竜王は何度か中空を見つめました。詰みがあることはもちろん、藤井竜王にもわかっています。 108手目。藤井竜王は捨て駒の金を取ります。駒台には「飛飛角/金金金銀銀/歩歩歩歩」と多くの駒が乗り、三段に並べられていました。 109手目。菅井八段は桂を打って王手。藤井「あ、負けました」 藤井竜王が投了を告げて、対局終了。109手と標準的な手数ながら、非常に密度の濃い一局でした。終局後、インタビューに応じる菅井八段からは、精魂使い果たしたかのような疲労ぶりがうかがえました。 両者の今期A級成績はともに1勝1敗となりました。菅井「今日の将棋はですね、終盤が難しかったんですけど、一応いい結果を残せてよかったかなと思います。せいいっぱいがんばっていきたいと思います」藤井「ちょっとここまで2局、いろいろ何度かミスが出てしまってると思うので、もっと内容をよくしていかなくてはいけないのかな、と思います。今日の将棋、少し早い段階で形勢を損ねてしまって。その点は、見ていただいた方には申し訳なかったなというふうに思っています。内容をしっかり反省して、次からまた、よい内容にしていけたらと思います」 両者の通算対戦成績は菅井3勝、藤井5勝となりました。その点について尋ねられると菅井八段は「そんなに勝敗も気にしてなかったので」と答えていました。 史上最年少名人が期待される藤井竜王。本局での負けはもちろん痛いものでしょう。しかしリーグはまだ長い。名人挑戦の可能性は全員に残されています。 1982年度の名人戦挑戦者決定リーグ戦(現A級順位戦)。A級1期目の谷川浩司八段(当時20歳)は内藤國雄王位と米長邦雄王将・棋王に敗れたものの、7勝2敗という成績で名人挑戦者決定戦(プレーオフ)に進みました。そこで中原誠十段(前名人)に勝って、加藤一二三名人への挑戦権を獲得。1983年の名人戦七番勝負を制し、21歳の谷川新名人が誕生しています。これが現在にまで残る、史上最年少名人の記録です。